レゴン・スリ・パドマ舞踊 を創りました!

始まって12分以降がレゴン・スリ・パドマ舞踊です
音楽作曲:カデ・フェリー(kadek ferry)
舞踊振付:井上真由美(mayumi inouye)

ここ半年ほど、夢に現れるくらいに、無性にレゴン舞踊を創りたいという気持ちが沸いておりました。夫にそれを話すと
「これはきっと何かを興すべき時期なのかもしれないね。
作曲は自分に任せておいて。レゴンは難しいけれど自分の勉強にもなるし。
これから、少しずつ題材になりそうなテーマや、自分の好きなフレーズなどを集め始めて。」と賛同してもらいました。

これまでにも夫婦で舞踊を作った事はありますが、
歓迎の舞踊などのルールが厳密でないものでした。
今回『レゴン舞踊』を作るにあたって、
決め事が多い舞踊であるが故の苦労と困難を数多く経験しました。

私の知る範囲では、新しい作品を創る際は演奏を先に作ってから、踊りを後付けする方法が取られますが
この舞踊に関しては、振付けと作曲を、並行して行いました。
それは「楽器の音と踊りが合っていない作品は、ズレが気になって踊り込めない」というのが私の中にあるからです。

例えば細かく踊っているのに演奏では反映されていなかったり、
逆に太鼓の音がシッカリ入っているのに踊り子は全く違う流れで動いたり、
古典といえども伝承されるうちに、少しずつ先生の癖がついて変化している場合もあり、演奏者がフレーズを変えてしまう事もあるのだ・・・と、
これまでの経験から少し感じておりました。
ゼロから創るのであれば、自分の身体に染み付いたスタイルで踊れるという欲もありました。

今回、日本の曲をアレンジして挿入したかったため、特にその部分で苦労しました。
1 日本の曲のフレーズを、ガムラン楽器の音階でシンプルなフレーズに編曲
2 その音にに沿った 踊り を考える
3 踊りを入れる事によってズレる箇所の音や、繰り返し数を変えてもらう
4 音を聞き直してから、また 踊り を修正する
5 古典のルールに従った順番で曲中に挿入する。
といった作業の繰り返しが続き、かなりの時間を費やしました。

レゴン・スリ・パドマ舞踊 を創りました!

主旋律メロディが出来たら、それにあう装飾(コテカン奏法)を考え、
チャルンやジェゴガンなど低音部楽器の音を探る。地道な作業である。

曲と踊りの骨格が出来てからは、演奏をしてもらう楽団選びに入りました。
・スマル・プグリンガン楽器であること
・自分の生徒を踊り手にしたいので、それを受けてくれるところ
これらの条件にあう『デウィ・スリ楽団』へ、演奏を依頼する事にしました。

バリでは、芸術に関する物事を開始する吉日が暦で決められています。
まず、僧侶マンクーのお宅を訪れて、舞踊の成就祈願に最適な吉日をお伺い。
指定された 3月12日 満月の日に、プラ・グヌン・サリ寺院でヌアセンという儀式を執り行って頂きました。

レゴン・スリ・パドマ舞踊 を創りました!

ヌアセン儀式: 満月の朝、プラ・グヌン・サリ寺院で作品の成就祈願。

この寺院は水利組織スバックの寺なのですが、祀られている神の一つがプリアタン村の芸術家に信仰されているのです。
「当日、神前で曲の一部分を奉納をするように」と僧侶がおっしゃったので
楽器数台を持参し、数名の演奏者と踊り手を連れて寺院へ向かいました。
この時点では、未だ我々夫婦しか曲を知らないので、とりあえず口で唄ってそれを演奏してもらい、踊り手には私の後方で同じ動きを真似てもらうという形での奉納となりました。

作品には私達のグループ『サンガル・スリ・パドマ』の名前をとって、
『レゴン・スリ・パドマ』舞踊と名づけることになりました。

寺院での儀式ヌアセンが終わった日から、楽団へ曲を伝えて練習を始めました。
二回目の練習の時の事「これ、早く覚えたら大祭カルヨ・アグンで奉納できるね」と演奏者達から提案がありました。
しかし、大祭の奉納までは、一ヶ月ちょっとしかありません・・・。
レゴン舞踊は複数のパートに分かれており、一つのパートを演奏できるようになったら録音をし、その音源を使って生徒に踊りを伝える方法を取っていたので、演奏は覚えてもらっても、踊りの方が間に合わないという事も有り得ます。

レゴン・スリ・パドマ舞踊 を創りました!

レゴン・スリ・パドマ演奏練習風景
演奏者に曲を伝える

レゴン・スリ・パドマ舞踊 を創りました!

振付の中でも移動や立ち位置決めは悩んだ部分
、私の頭でイメージしても実際に動いてみると、ぶつかったり、見苦しかったりする

先ほど書いた大祭カルヨ・アグンは、ここプリアタン村で4月に開催される予定で、
去年の10月から信徒によって準備が進められていました。
バリ島のヒンズー教では、お供え物や儀式だけでなく、
楽器の演奏や、踊りを奉納することも神へ対して重要な捧げ物をする行為と考えられています。
デウィ・スリ楽団は最終夜の舞台で奉納をする予定ですが、大祭だからいつもの祭とは違う演目を持参したかったようです。
踊りを練習していた生徒も、カルヨ・アグンの話をしたら、表情がパッ!と変わりました。出演モードになって張り切っています。

もし奉納が叶うのならば、最初の披露が神前という、私達にとっても、この上ない光栄なこと。
そこで私は、慌てて衣装を誂えることにしました。

Sanggar Sri Padma - f studio, Peliatan Ubud, BALI: スリ・パドマ (サンガル・スリ・パドマ)

衣装のアイディアは以前から考えていた濃紺に赤のアクセント。
スリ・パドマ・グループのロゴである
『藍色の蓮の中央で燃える火』を表現しています。
藍色の腰巻布には、特注で日本の実家の家紋をデザインし金柄で刷って頂きました。
日本の着物の重ね着のイメージで、腰巻布の裏側には赤い布張りがしてあります。

腰から下げる『オンチェール』という垂布は、私の手作りです。
仏具にでもありそうなデザインですが、これは仏教とも少し関係あるため。
レゴン・スリ・パドマ舞踊には、曲中に日本のメロディが散りばめてあると書きましたが、ストーリーも、千手観音菩薩をモチーフにした舞踊なのです。

レゴン・スリ・パドマ舞踊 を創りました!

レゴン・スリ・パドマ舞踊の衣装は、特注した家紋入り柄

今回、自分が好きな『古典レゴン』に近い舞踊が作りたく、近年のバリ舞踊に見られるような新しい動きを可能な限り避け、
レゴン舞踊のルールには忠実に従うように気をつけて創作しました。

それでも、自分で気が付かない部分があったようです。
本番前の最終リハーサルの日、マエストロの踊り子さんニョマン・スラシ(I Nyoman Sulasih)さんに初めて舞踊を見てもらったのですが、「あの部分はちょっと現代風に見える」と、一箇所ご指摘いただきました。
さすが古典レゴンの踊り手さんです。ありがとうございました!

あれ?懐かしいなぁ。
どこかで観た事あったっけ?
古いレゴン舞踊を掘り起こしたの?と思っていただけると嬉しいです。

レゴン・スリ・パドマ物語

レゴン・スリ・パドマ舞踊 を創りました!

レゴン・スリ・パドマ舞踊・寺院での初奉納 2017年4月30日 
Photo by GiLO

スリ・パドマは心優しい女神さまで、
人々を慈しみ憐れむ気持ちを深く持っています。

困っている人がいれば、手を差し伸べ
病に伏せる者がいれば、痛みを和らげ
泣いている子が居れば、慰め

人々を幸せに導こうとするスリ・パドマの行いで
世の中は平和で笑顔に満ちた毎日を送っていました。

しかし、諸行無常という言葉があるように、時というものは変化します。
不穏な時代もあれば、戦いに明け暮れるような荒れた時代を経験する事もあります。

スリ・パドマは、その度に誰かを助け続けますが
誰かに手を差し伸べても、すぐ横にも困っている誰かが。
救っても救ってもキリがないぐらいに大勢の人々が存在するのです。

生きとし生けるもの全てを救いたい・・・
スリ・パドマは自分の非力さを、嘆き悲しみます。

そんなスリ・パドマの様子を天界から見ていた神は
一人でも多くの困った人を発見できるように「千の眼」と、
一人でも多くの人を助けられるように「千本の手」を彼女に授けます。

この千の眼と手のお陰で、
スリ・パドマはより多くの人を救う事が出来るようになり
世の中にまた、安穏な時代がやってきました。

しかし、人の心も、時代も流れるもの。
千本の手でも足りない様な悲しい時代を迎えない様、
一人一人が深く考えていきましょう。

千手千眼観音菩薩は、仏教では観音菩薩の化身(インドのアヴァターラ、バリではアワタラ)の一つとして
日本ではよく知られた観音様です。
ここでは、「昔々、スリ・パドマという名前の心優しい女神様がおりましたとさ」という私なりの設定でストーリーを組立てて舞踊にしております。
千手観音菩薩は男性ですが、この舞踊では女性として捉えてストーリー創作しています。
また、バリ島にスリ・パドマという名前の女神様がいるわけではなく、
ヒンドゥー教に数々存在するアワタラの一つ、とご想像いただきながら、映像をお楽しみください。

 レゴン・スリ・パドマ舞踊(Legong Sri Padma)動画 

現在「九州バリ芸術祭を開催したい!」と個人で動いております。
この舞踊が、その公演の目玉の一つになれば・・・と思っております。
こちらのサイトの『九州バリ芸術祭』の記事もお読み頂き、スポンサー、参加者として是非ご協力お願い申し上げます。

レゴン・スリ・パドマ舞踊 を創りました!

レゴン・スリ・パドマ舞踊・寺院での初奉納
mayumi & Komang Sri 2017年4月30日
Photo by GiLO

Matur Suksma!

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