古いスタイルのペンデット舞踊

ペンデット舞踊は、バリ・ヒンドゥ教の宗教儀式に欠かせない数々の神聖な舞踊のうちのひとつで、神々が、この世界に降臨してくるのを歓迎する際に踊られます。この神聖なペンデット舞踊は、よく「プペンデタン舞踊」という呼ばれ方をされます。
プペンデタン舞踊は、プリンギーという神々が御座する神聖な建造物へ向かって踊られ、踊り手は、その降臨を歓迎する意味をこめて、お供え物のチャナン・サリ、お香などを手に持って踊ります。

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舞踊を奉納する前のお祈り

2014年4月21日(月)は、インドネシアで女性解放のシンボルと謳われるカルティニ女史を記念した日「ハリ・カルティニ」でした。
この日、バンジャール・カラー地区の婦人会(PKK)は、カルティニの日を祝うイベントを行い、その中で、メークアップ・コンテストなどに混じってキドゥン(詠唱)コンテストや、奉納舞プペンデタンのコンテストという、とてもバリっぽいものがありました。

コンテストは、「テンペカン Tempekan」と呼ばれるグループごとに代表を出します。
テンペカンは、バンジャールという行政単位の、そのまた下にある隣組のような単位で、ここバンジャール・カラー地区には、それぞれの住む地域の方角に基づいた名前をつけた
「テンペカン・トゥンガー」「テンペカン・カウー」「テンペカン・クロッド」「テンペカン・カジョー・カンギン」
という四つのテンペカンがあります。

プペンデタン舞踊コンテストでも、この各テンペカンから舞踊の踊り手を選出することになり、家の位置からいうと、「テンペカン・カウー」に属す m (mayumi inouye)は、そのグループの踊り手として、競技に参加することになりました。

プペンデタン舞踊は、美しく魅せる舞踊というよりは、神々を歓迎する真摯な気持ちが重要な奉納舞踊なので、踊り子ではない普通の人が、特別な練習をしなくても踊れるような、ゆっくりとした、シンプルな動きが続く舞踊です。
先頭でリード役となる女性祭司の踊りに合わせながら、後方は流れる様に同じ動作をします。新米主婦でも、何十年も踊り続けている年配の婦人の後方にピッタリくっついていれば、見よう見まねで参加できます。

今回の舞踊コンテストでは、10名で一つのチームを組みますが、バンジャール・カラー地区の既婚者には現役・引退問わず、かなりの数の踊り子がいる為、評価に差が出ないように
リード役の先頭2名以外は「踊り子参加禁止!」という通達が出されました。

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プペンデタン舞踊

m は、エラワティさんという元踊り子さんと一緒に最前列に配属され、他のメンバーは我々の動きを見ながら踊る事になりました。
実は、このプペンデタン舞踊、普通の舞踊とは性質が全く違うため、踊り子にとっては、難しい舞踊なのです。
皆で同じ動きを取って、儀式の場の空気を変えるのが目的のこの宗教舞踊は、踊れない人の方が、流れに乗れるので、全体がきれいにまとまります。
公演などの舞台で踊り慣れている踊り子は、ついつい音楽に合わせて、ピタッと動きを合わせる事や、アガム(ポーズの基礎)を気にしてしまいがちで、全体の流れからズレてしまうのです。

m とエラワティさんは、互いに違う動きを取って後方が迷わない様、同じテンペカンの、ニ・ワヤン・ロティさんという1960年代に現役の踊り子であった御婦人に、師事を願いました。
ロティさんは、プリアタン村の各寺院で寺院祭オダランが行われるたびに、もう何十年もプペンデタンを踊ってきている方です。

ロティさんに教えを乞うたのは、正解でした。
もともと踊り子であったため、通常の踊りと、寺院での踊りの違い、つまり、我々が引っかかりそうな部分を、自分の経験から指摘してくれました。
彼女が記憶している動きは、かなりクラッシックなスタイルだそうで、寺院で最近踊られているのは、アレンジしてあるスタイルだそう。
ロティさん自身、昔、プリアタン村のバンジャール・トゥンガー地区の先輩踊り子から伝承されたそうで、この古い動きを消してしまわないためにも、前から一度、次の世代に教えたかったんだそうです。

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ロティさん(中央)の家での練習風景 右が m

誰でも奉納ができるようにと、ゆっくりと、本当にゆっくりとしたシンプルな動きで構成されるプペンデタン舞踊。
とても簡単な動きの連続ですが、リズムの取り方が難しいっ!
m は、カジャールという楽器のリズムに合わせてピタッと踊るのに慣れているのですが、このクラッシックなプペンデタン舞踊では、カジャールが鳴り終わったら動く。という、特徴がありました。
タイミングの取り方が難しく、ついつい、先走って動いてしまいます。

リズムの取り方だけではありません。アガムと呼ばれるバリ舞踊の基本のポーズでは、腰を反らせたり、お尻を横に出したりするのですが、これについても、プペンデタン舞踊では、重心を中央にどっしり構えて、体の曲線を強調しない。というポーズが続きました。
体が基本のアガム型を覚えてしまっているので、体制を変えるために足を出すたび、ついついお尻も突き出してしまいます・・・

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プペンデタン舞踊

ロティさんは、根気強く、繰り返し踊って見本をみせてくれました。
テンペカン・カウーの主婦達も、仕事や忙しい家事の合間を縫って、毎日2時間3時間と、熱心に練習。ついには、皆の動きの流れが揃ってきました。

そして、この努力の結果、
やった~!!!!
なんと、テンペカン・カウーは、プペンデタン舞踊で優勝を獲得したのです。

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一等賞!テンペカン・カウー・グループ

ニ・ワヤン・ロティさん、ご指導、本当にありがとうございました!

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