30年の歴史~オベロイ・ホテル公演(ティルタ・サリ楽団)

「どこ行くの?」「ノリス公演さっ!!」

この近辺に住む人だけかもしれないが、バリ芸術家のよく使うスラングに「ノリス(noris)」という言葉がある。
恐らく、インドネシア語の辞書には載っていないであろうこのノリスは、
ツーリスト(Tourist)という単語が語源となっている。
バリ芸術家が「ノリスする」と言えば、ツーリスト向けの公演に出向くと言う意味になる。
おもしろいスラングだ。

プリアタン村のティルタ・サリ楽団(Tirta Sari)も、
他の多くの楽団と同じように、ノリスを頻繁に行うグループである。
毎週金曜日の定期公演はガイドブックなどでも案内されているので、認識度が高いが
それ以外に、毎週スミニャック(クタ)のオベロイ・ホテルでもノリスを行っている。

バリ島各地のホテルで、楽団が定期的に公演を行うのは珍しくないが、
実は、このティルタ・サリ楽団とオベロイ・ホテルの間には、驚くような長い歴史がある。

1983年以来、ティルタ・サリ楽団は、毎週1回オベロイ・ホテルに通ってノリスを行っているのである。
30年もの間、ひとつのホテルで、ゲストのために公演を行い、バリの思い出作りに一役かう。
こんなにも長い間、継続して公演を行っている・・・ホテル側も楽団側にとっても、なんともすごい事ではないか!

our balinese gamelan group
Tirta Sari at Oberoi

オベロイ・ホテルへの道中、私 f (kadek ferry)は、よく彼ら先輩演奏家に
ティルタ・サリ楽団の長い歴史について話を聞く機会がある。
とても興味深い思い出話がたくさん聞けるし、先輩達も話出すといつまでも会話が止まらない。
このおしゃべりの中からは、私の知らないバリの変遷をも見出す事ができる。
交通、経済、観光、古き良きバリが、今のように姿を変えていく様子なども、おしゃべりの中から垣間見れるのだ。

バリ島が変わるのは、止めることができないし、変化の全てが悪いわけではない。
会話からは、今でも変わらないバリの素晴らしい文化を改めて感じることもできる。
そして、「芸術家が、ツーリストのために遠路遥々と演奏に行く」という仕事が、30年変わらずに続いているというのを目の当たりにすると、やはりこれはすごい事だなぁ・・・と感心するのだ。

our balinese gamelan group
Tirta Sari at Oberoi

ホテルへの往復にはベモという乗り物を使う。バンを改造した車で、
日ごろは公共交通として夕方まで街中を走っているが、そのベモを2~3台貸し切るのだ。
そして、ホテルへ向かう往路、
楽団員は、必ず道草をする。ちょっと早めにプリアタン村を出発して、おいしいと評判のワルンで止まってナシ・ブンクス(お弁当)を買うのだ。
運転手も心得たもので、今現在、楽団員に人気の店をきちんと覚え、言われなくても車を止める。
少し前はセンゴールと呼ばれる屋台群に寄っていたが、ここ最近のご贔屓は
シバン村のメン・コダックという豚肉料理のワルンだ。
ラワールなどのバリ料理が売られている他、ピサン・ライや、クレポン、スンピン、ジャジョ・ククスといった定番のバリ菓子も多種類が揃えられており、
楽団員はそれぞれ自分のお腹(と財布)に合わせて欲しい物を買い、またベモに乗り込む。

オベロイ・ホテルでは、ティルタ・サリ楽団はレゴン・ラッセムをメインに持参するが、
それ以外は、ペンデット、バリス、クリンチ、チャンドラワシといった、金曜日のプリアタン村での定期公演とは全く違う演目を披露する。
(踊り子の都合によっては、トペン・トゥアやジャウック、オレッグ・タムリリンガンなどに代わる)

~芸術は、バリ文化の中の大切な要素のひとつであり
その文化に触れないバリ観光など意味を持たない~

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