トゥンプック・ランデップ 「鉄の日」は芸術家にとっても大切な日

バリ島のトゥンプック・ランデップの日は、一般的に「鉄の日」として知られています。

もともとは、聖剣クリスをはじめとする槍などの武器、またはナイフ、鋤、鎌などの日常使う鉄製の道具類へ感謝のお供え物をする日でしたが、現在ではバイクや車、冷蔵庫やコンピューターなど金属を含む機械製品にもお供えをするように変化してきました。

Tumpek Landep Upacara di Bali

トゥンプック・ランデップの日は、芸術家がその道具類にお供えをする日でもあります。

というのも、我々音楽家や舞踊家とって不可欠な楽器や衣装に、金属製のものが多いからです。銅鑼のゴンやガンサをはじめとする楽器類は殆どが金属製、踊りでも聖剣のクリスや槍が使われます。

また、楽団所有のガムラン楽器の誕生日(オトン)が、このトゥンプック・ランデップの日という楽団も多数あります。

今年2010年は3月13日がトゥンプック・ランデップでした。

グンタ・ブアナ・サリ楽団(Genta Bhuana Sari (gbs) )は、その数日前、トゥンプック・ランデップに向けて楽器を綺麗に掃除するために朝から集まっていました。

楽団が所有するのは、ゴン・クビャール楽器一式、ゴン・グデ・サイ・ピトゥ楽器一式です。

楽器の金属鍵盤「ダウン」を一枚ずつ外し、木枠から、音響用の竹筒の穴の中まで丁寧に磨きます。全てを洗い終えて乾燥させ、また糸(皮紐)を通して組み立てるのは時間のかかる作業で、お昼ごはんを終えて、夕方までかかる作業でしたが、少しくすんでいた楽器も、ピカピカと金色に光ってキレイで、すっきりした気分でトゥンプック・ランデップを迎える準備が出来ました。

楽器や衣装をキレイにする、丁寧に扱う、というのは、物理的に綺麗にするのみでなく、私は芸術家としての魂も一緒に磨いているのだと意識しています。

また、こうやって楽器のために儀式を行うことで、芸術に対する心持ちを新たに固め、新しいインスピレーションをも得ることが出来るようになると思っています。

今回のトゥンプック・ランデップでは小さな規模(オダラン・アリット)で儀式を執り行う事になったため、場所がプリ・カレラン王宮に変更になりました。大きな儀式(オダラン・グデ)の場合、グンタ・ブアナ・サリ楽団とティルタ・サリ楽団の楽器はグヌン・サリ寺院に運んで儀式を行うのが通例です。

トゥンプック・ランデップ当日、全ての楽器、楽団の所有する衣装類、バロンやランダ、そして儀式に欠かせないお供え物類が王宮に運び込まれました。

演奏者は、個人で所有する楽器がある場合(スリン笛、ルバブやクンダン太鼓)それを自宅から持参するのが恒例です。

「m」も、他の踊り子に倣って、自分が持つ衣装のうちオレッグ・タムリリンガンとウィラナタの冠だけを持ってきて、他の楽器類と一緒に並べました。

こうやって、みな一緒に神の前に並べて、儀式を行っていきます。

お昼過ぎに、グヌン・サリ寺院のマンクーによって儀式は開始されました。

芸能の神々から「taksu」をもらえるように、またいつも楽団を見守ってもらい、グンタ・ブアナ・サリ楽団とティルタ・サリ楽団の芸術活動が順調に行くよう願いながら、皆が心を一つにして祈ります。

ごの儀式は、楽器の誕生日を祝うものであるとともに、ムサカパン(upacara mesakapan=perkawinan)の儀式でもあります。

ガムランと演奏者の結婚、踊り子と演奏者&楽器とが結婚すると考えてよいと思います。

出席したメンバーが楽器と一体になる、またメンバー同士も一体となって、これから末永く芸術活動が続くように望み、祈ります。

イダ・バタラ・ラトゥ・パンジ、芸能の神々がいつも我々の傍においで下さいますように。

マトゥール・スクスマ!

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