龍の幟「ウンブルウンブル」 2009-2013年

3年前、バリ伝統画家のクトゥット・マドラ氏、その弟でやはり画家のマドリ氏が
プリアタン村のプラ・ダレム・グデ寺院に奉納するウンブルウンブルを描く際に
f (kadek ferry) と m (mayumi inouye)もお手伝いさせてもらい、4人の手で完成させました。

ウンブル・ウンブル

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プルナマ海岸での儀式の行列で先頭を飾る赤い幟

その時は、龍の絵が描かれたこのウンブルウンブルは、白と黄色の二種類でした。
今年、また寺院より奉納の依頼があり、今回は「赤」の布に描くウンブルウンブルを描くことになりました。

今回は、クトゥット・マドラ氏と、その息子のイ・マデ・ブラタ氏がメインで制作。
前回と同じく fm も横で色つけの作業を手伝いました。
ちょうど村の別の寺院で、数年に1回の大きな祭事(カルヨ・アグン)が行われており、
さらにガルンガンの行事も重なるという、バリ人にとってはとても忙しい時期に、絵付けが開始されました。

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ガルンガン祭の時期、子供達はバロン行列に熱が入る

この寺院への奉仕作業(ンガヤ=Ngayah)は、三年前と同じく、日が昇ってから、日が暮れるまで毎日続きました。

赤い布というのは、前の白や黄色という薄い布に絵を描くのとは、多少勝手が違いました。
ベースが明るい色だと、絵の具の色が、調合したものより薄く仕上がるのですが
濃い色の布だと、調合した色と、布の色が混じって、意図しない色になってしまうのです。
そこで、黒が多用されました。モノトーンにするのです。(赤と黒の二色)

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Umbul Umbul Naga Merah

バリの伝統絵画の手法は、とても忍耐をようするものです。
写真を見て頂くとわかりますが、黒いウロコを描くのに、3~4回繰り返し薄い黒を重ねます。
竹を叩いて作った筆で一度黒い色を塗り、それが乾いてから、同じ色を少し場所をずらして塗り、グラデーションをつけます。
濃い黒と薄い黒、灰色を使い分ければ?と思うのですが、白が入った灰色は、全く別の色調になってしまうのです。
また、濡れているとにじむので少しずつしか進みません。

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最初の黒

色つけには、通常我々が使う筆ではなく、竹を叩いて繊維をほぐした棒が使われます。
塗るのではなく、布をゴシゴシこする様に色を刷り付けるのです。
試しに普通の筆でも色をつけてみましたが、瞬く間に絵の具が布に染みて、デッサン線の外側の、色をつけない部分にまで拡大してしまいます。
竹の筆だと、描いてる時はなんだか粗い感じがするけれど、乾くときれいに色が浮いてきて、本当に相性がいい。
最初にこれを考えついたバリ人画家はすごい、感謝しないと・・・と、色を塗りながらマドラ氏が笑って語ってくれました。

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二回目の黒

また、描く線が細いと、竹の幅を狭く、大きい面積では幅広の竹と、使い分けるのにもコツが入りました。
色つけの場所が変わるたびに最初は何度も「この筆?」と確認を取りながら作業をしました。

基本の龍の絵のデッサンは、鉛筆とペンでマドラ氏とブラタ氏によって描かれました。
fm が手伝えるのは、それが終わって、色を付けるところから。
黒い色を重ね終わったら、金色を於いていきます。そして、ポイントとなる所に薄く白を入れて終了です。

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三回目の黒

今回のウンブルウンブル制作に入った息子のイ・マデ・ブラタ氏は、インドネシア芸術大学デンパサール校(ISI Denpasar)の絵画講師です。
職業柄、生徒達に教え慣れているので、どういう風に見本を示せばわかりやすいかを知っていて、
ここから開始して、この様に色を置いて、ここで止まる。というサンプルを示してくれ、fとmはそれを真似ていきます。
また、 fm が苦手な筆の運び方などを瞬時に判断して、作品がよりきれいに仕上がるように、それぞれのクセを直してくれました。

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I Made Berata氏

バリの伝統絵画、プワヤンガン (pewayangan)は、布やカンバスに描かれる、ただの美しい絵ではありません。
それぞれ古い物語をテーマにして、絵画の中の登場人物を使って倫理や人生哲学について表現してあります。
このウンブルウンブルという細長い旗に、龍が描かれる理由にも意味があります。
興味がある方は、叙事詩マハバラタのアルジュナとハノマンについてのエピソードについて書いた以前のウンブルウンブルの記事を読んでみてください。

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Umbul Umbul Naga Merah

バリの絵画は、このウンブルウンブルのように、もともとは寺院の為に描かれるものでした。
儀式の際に使われたり、寺院を装飾するために、奉納されるものでした。
我々の知る絵画は、誰の作品か判るように署名をいれますが、バリでは今でも、寺院へ奉納する際には画家の個人名を署名することはしません。
仕上がった後は、ただ、描いた日付を入れるのみです。

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Umbul Umbul Red Dragon

我々が慣れないながらもマドラ氏に教えてもらいながら、初めてウンブルウンブルの奉納をしたのは2009年。
その時から既に赤い色のウンブルウンブルの奉納予定はあったのですが、なんと三年も経過してしまいました。
ちょっと下の写真を見てください!
最初に奉納をした時、お昼御飯の後に撮った写真ですが、マドラ氏の愛犬の、この仔犬が
なんと今は、こんなに成長しています。そして、今も変わらず相変わらず飼い主のマドラ氏が絵を描く時は横に寄り添っています。
(同じく、このサイトも三年が経過したという事・・・月日が経つのは早いですね。)

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クトゥット・マドラ氏と愛犬 2009年

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クトゥット・マドラ氏と愛犬 2013年

そして、今、プリアタン村の寺院には、我々の手がけた旗が風になびいてはためいています。

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今回の赤は外庭と神殿前門に飾られている

奉納は、神様のために行うものなのですが、我々にとっては、自分達の知らない事を、奉納を通して学べる良い機会で、得る物がたくさんありました。
Matur Suksma!

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